欧米と日本の雇用形態の違い
外国人に日本のイメージを尋ねたときに、よく言われる答えの1つに、日本人は働きすぎというものがあります。
諸外国に比べて日本は残業が多いのですが、なぜ残業がなくならないのでしょうか。
日本企業は年功序列制でなど、日本独特の仕組みがあります。
欧米の場合、従業員に対して業務内容や責任範囲を明確にして雇用します。
これに対して日本の企業は多くの場合、業務内容や責任範囲を明らかにしないまま雇用しています。
欧米が仕事に人をつけるのに比べて、日本は人に仕事をつけている、まったく逆の雇用形態なのです。
欧米では従業員と会社との間でジョブ・ディスクリプションという契約書をかわし、それぞれの従業員の業務内容や責任の範囲、権限が決められています。
このため自分の責任・権限の範囲の仕事に関しては、上司に確認する必要がありません。
しかし日本の場合はこのような取り決めがありませんから、何をするにしてもいちいち上司に確認しなければいけないのです。
上司に確認して了解を得、周囲の部署などにも許可をもらって、組織として意思統一をしてからでないとゴーサインがでませんから、仕事はスピードダウンします。
また、現場で革新的なアイデアが生まれたとしても、上へ通してく途中で誰かが待ったをかけて、結局は実現しないことも少なくありません。
このほかにも、業務内容や責任範囲が明確でないことの弊害はたくさんあります。
自分の仕事が終わり、さて帰ろうとしたら、上司からこの書類も処理しておいてと、別の仕事を頼まれるなど、仕事の範囲がどんどん広がっていき、仕事がきりもなく増えていくのです。
いくら残業を減らせといわれても、目の前処理しきれない大量の仕事があれば、嫌でも残業をせざるを得ません。
これが日本の現状なのです。
日本人は労働生産性が低いのか?
日本人は残業を長時間しているのに利益を上げておらず、労働生産性が低いと指摘されることもよくあります。
たしかに、OECD(経済協力開発機構)が2014年に公開したデータでは、日本の労働生産性はOECDに加盟している34か国のうち、21番目です。
さらに、G7のなかでは最下位という結果になっています。
データだけをみると、日本人の労働生産性が低いということになるのですが、日本人は本当に労働生産性が低いのでしょうか。
みんな一生懸命働いています。
勤勉な国民性が日本の良さですから、それほど労働生産性が低いとは実感できないのではないでしょうか。
実はOECD加盟国が労働生産性の高い国はすべて、資源をもっている国や、金融センターがある国、小規模な都市国家ばかりです。
つまり、高い利益が得られる産業を持つ国が、労働生産性の高い国といえるのです。
これに比べて、日本はサービス業が全体の7割を占めており、特に利益率が高い産業を持っているとはいえません。
高い利益が得られる産業が日本に少ないのは、政府が儲かる産業を育ててこなかったことが原因です。
私たちががんばって何かを生み出したとしても、それを買ってくれる人がいなければ意味がありません。
これは消費を活性化させる経済システムや市場が求められているのです。
そしてこれは政府や企業のトップが行うべき仕事なのです。
このような状況下で、日本人は労働生産性が低いというのは酷なのではないでしょうか。
単に残業を減らすだけでは、業務の効率化は実現しません。
政府が産業を育てる政策を取らない限り、いくら残業を減らせと呼びかけても事態は改善しない、これは確かなことだと思います。